第2回ネットで発表会課題曲について

この記事はお蔵入りにしようかと思いましたが、今回の発表会はとても好評で、ご感想の長文メールを下さった方も居たりと色々考えさせられたので公開する事にしました。

第2回ネットで発表会の課題曲について記しています。
冗長な内容がだらだらと続くので読まなくてokです。

今回短い単旋律の曲を課題曲として皆様に弾いて頂きました。
レッスンで弾いてもらう事はあっても、私が弾くことはせず、アドバイスもせず、「どうすればこの曲を魅力的に弾けるか、今まで勉強したことを思い出して考えてみましょう」という課題を提示しました。
自分で曲の特徴を感じ、どう弾けばこの曲に相応しい演奏になるか皆さんに考えて頂きたいと考えたからです。


【きっかけ】
この課題は、現在中学1年生の男の子A君がレオ・ブローウェルの11月のある日を勉強をしていた時のある事がきっかけで思いつきました。

この曲は「ラシド―ドーミー」から始まるフレーズを計6回弾くことになります。
このフレーズをA君は区別なく、全て同じ表現で弾いていました。
その時に「最初のラシド、リピート後のラシド、フェルマータ後のラシド、ダカーポ後のラシドそれぞれその前後の流れをよく考え、よく感じ、この3つの音だけで良いのでその時その時に相応しい最高のラシドを考えてみよう」という目標を立てました。

場面ごとに演奏を変える場合、例えばシの音を開放で弾くか、3弦4フレットで弾くか、インテンポで始めるかゆっくりから徐々に速くするか、ビブラートをかけるかかけないか、と言った事を確認していきました。

課題を出してから、その子の演奏がラシドだけでなく徐々に全体的に良くなり、ここはこう弾きたいという気持ちが見えるようになってきました。
例えばイ短調からイ長調への転調直前のハーモニクスの反復で音を徐々に大きくし、テンポもあげていきたいと言った感じです。
「転調前の緊張感を出したい」「イ長調への転調で曲調が変わるので5つのハーモニクスでその雰囲気に徐々に移行したい」という気持ちが、言語化はまだ出来ないながら生まれたようです。

自分がこの曲をこう弾きたい、このフレーズをこう弾きたい、この音をこう弾きたい、そういった気持ちを生み出し、その上で足りないなら必要な技術を磨いたり、表現の勉強をすると、ただ先生に言われたからそう弾く、と言うのではない目的を持った練習や創造的な演奏ができるのではないかと考え、ここ数年色々試してきたのでとても嬉しかったです。

そして仕上がっていった時、A君の11月のある日の演奏は私に感動を与えてくれました。
この曲をこう弾きたいという気持ちがよく伝わってきたからでしょうか。

A君の時はラシドの3つの音が始まりでしたが、ギター歴も技術も違う皆様それぞれに曲の調性・拍子・速度・構成等様々な要素からその曲の特徴を感じ、こう弾きたいという気持ちを芽吹かせ、育てて頂くきっかけになればと言う願いを込め、今回の課題曲を提案致しました。


【演奏について】
バロック時代の名フルート奏者であり、フルート奏法試論を記したヨハン・ヨアヒム・クヴァンツと言う方がいます。
フルート奏法試論はバロック時代の演奏について学ぶための資料として有名です。
クヴァンツは著作の中で「バロック時代の演奏者は、その時々で、荒れ狂う、激烈な、激情的な、楽しい、陽気な、甘美な、情愛のこもった、荘重な、気高い、厳粛な、無気力な、悲しい、物憂い【情緒】の中に身を置いて、次に演奏を通して同一の情緒を聞き手の中に呼び起こすことが要求された」と記しています。
演奏する人はその曲の特徴を掴み、心から楽しいとか悲しいとか感じて演奏し、聴いている人にも同じ感情を共有してもらえたら良いよ良いよー、ってことですかね。

そのためにどんな工夫ができるかを挙げていきます。

〇使用弦による音質の追及
楽譜を見るとわかる通り、この曲の楽譜はうちの教室の楽譜には珍しく、運指や弦の記号が書いてありません。


課題曲.jpg
最初のㇻは3弦、4弦、あるいは5弦、自由に考えるならハーモニクスで弾いてしまうか、中には最初から最後まで和音をつけてくださった方も居ました。
発想が豊かですね。
クラシックギターは基本1~3弦はナイロン弦、4~6弦は金属弦素材により、同じ音程でも少し音質が変わります。
同じ素材でも弦の太さが違うのでそれによっても音質が少し変わります。
また、1フレット、2フレットなど上駒に近い場所と、7~12フレット等ギターの中央部分でも同様です。
自分がどういう音でこの曲を弾いていきたいかで、使う弦も変わっていきます。
ハイポジションを使わず、ローポジションのみで弾いても、色々考え試した結果ならそれがベストな演奏と言えます。
ローポジションで弾く場合、開放の音を使う方も居ると思いますが、消音が難しくなったり音色の統一が難しくなったりと意外と技術が要求されます。

〇奏法による音質の追及
右手の奏法であるアルアイレ奏法・アポヤンド奏法の2種類のうち、どちらの奏法を使うかで音色は変わってきます。
また、右手の重心、指を弦にあてる際の角度でも変わってきます。

一般的に単旋律は太い音が出るアポヤンド奏法が向いているとされています。
斜め上から指を弦に置き、はっきりと第3関節から指を曲げるアポヤンド奏法は右腕の重みを弦に乗せやすく、太い音が出せるからです。
しかし、アルアイレ奏法でも右手の重心のコントロールで似たことはできます。
自分の持つ技術を把握し、最適な奏法を選べたらと思います。

〇拍子感
この曲で使われている4分の3拍子は1拍目強、2拍目弱、3拍目弱とアクセントが付きます。
強弱はそれだけで決まる訳ではないですが、それを念頭にいれて演奏する事が大事です。
割と音が伸びている旋律を弾きながら「ツータッタッ、ツータッタッ」と3拍子の伴奏が聞こえてくるように演奏できたら理想的でしょうか。

〇テンポ
指定していないので、皆さんそれぞれ相応しいと感じたテンポが正解です。
伴奏をつけると意外と速いテンポが似合うと感じるかもしれません。

〇フレージング
この曲は1~8小節と9~15小節の2つに分けられます。
※作曲者がそう考えていても演奏者が、別の区切り方をしてもokです。
1つの区切りの中でどう始まり、どう盛り上げ、どう終えるかといった演奏の起承転結を考えることが大事になります。
「音型で弾くや拍子、終止形を元に表現を決める」「感じたままに強弱や緩急をつける」「2つを組み合わせる」どれでも良いので「うーん、どう弾こうか…」と考える事が大事です。
毎曲考えていると段々演奏表現が浮かぶようになってきます。

〇調性
この曲はイ短調の曲のつもりで作りました。
※そう感じなかったとしてもそれは曲の特徴を感じる能力が幅広いという事でお気になさらず、むしろ誇ってください。
この曲の調性とは「ラを中心とする旋律的短音階の性質が感じられる」という事になります。
弾いてみて、ざっくりとで良いので、3拍子、割と伸びている音が多い、自分が良いと思ったテンポを加味し、その上でのイ短調らしさとはなんだろう?と考えられたら良いですね。
よく長調は明るい、短調は暗いと言いますが
長調:明るい、楽しい、幸せ、元気、ワクワクする、開放的、美しいetc.
短調:暗い、悲しい、哀愁的、怒り、孤独、気高い、美しい、激情etc.
と曲によって、人によって感じ方は様々です。
長調の中でも暗い感じの和音が使われたり、短調の中でも明るい感じの和音が使われたりもします。
長調だからこう弾く、短調だからこう弾くというのではなく、この曲(のこの部分)はこう感じるからこう弾こうと自分の感覚を大事にしてみてください。

〇ビブラート
ビブラートを絶対に使わなければいけないということは無いです。
ただ、ビブラートはクヴァンツの言う【情緒】を表しやすく、「ここでビブラートをかけたいな」、と思う所があったら使ってみると、聞き手に自分の感じたことが伝えやすくなるかもしれません。
また、ビブラートは「ただ音程を細かく変化させる」だけでなくテンポや場面(曲の盛り上がる場所・最後の音)によって変化をつけると効果的です。

他にも作曲者の生きていた時代とその音楽様式について調べたり、発想記号を演奏に活かしたりすることも重要ですが、今回の曲には不要なので省きます。
以上、曲から感じた魅力を演奏に反映させ、聞く人に伝えるための工夫になります。
強弱や緩急はフレージングに含めております。
フレージングは旋律のまとまった区切りのみとする考えもありますが、私は表現も含めて考えています。

ここまで考えないといけないの?と思う方、そう思うのが普通ですよね。
私も考えなくて良いと思います。
ギターを弾くのが楽しい!という事が一番大事なことです。

自分の好きな曲の魅力を自分の演奏を聞いてくれる人に伝えたい!と思ったら少しだけここに書いてあることを思い出してみてください。
ほんの少し役に立つかもしれません。

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